BAND 出場バンド

東京予選会レポート

◆グランプリに「Kurechanz」

「日経おとなのバンド大賞2009」予選会の最後を飾る東京予選会が10月25日(日)、東京都渋谷区のduo MUSIC EXCHANGEで開かれた。司会は前日の企業・職場バンド予選会に続き宇治田みのる氏が務め、異様な盛り上がりを見せた前日の興奮を受けて、「昨日に負けずにがんばろう」と会場に呼びかけた。

東京予選会には、各予選会の中でもっとも多い全324組の応募があった。その中から音源審査を勝ち抜いた全15組の兵(つわもの)バンドが参加。ロック系のバンドはもちろん、フォーク、フュージョン、沖縄音楽、ハワイアン、南米民族音楽のフォルクローレと、楽曲のジャンルも他の予選会になく幅広い。演奏テクニックや表現力は言うに及ばず、衣装や観客へのアピール力を含むステージ・パフォーマンスもレベルが高い。一方、コンテストとはいえ、演奏を終えたバンドは客席に戻ると観客として他のバンドの演奏に心から拍手をおくる。競争相手も素直にリスペクトできる、そんなおとなたちのすがすがしくも熱い競演となった。

東京予選会の最後に、「日経おとなのバンド大賞2008」全国大会のグランプリバンドで、今年の大会のポスターにも登場していただいたBLACKBOARDがゲストとして登場。グランプリを獲得した昨年よりもパワーアップした(?)圧倒的なパフォーマンスで会場を沸かせた。

レベルの高い戦いに審査は難航を極めた。審査員奨励賞は他の予選会より1組多い3組が選ばれ、11月29日(日)品川ステラボールでの全国大会に出場できるグランプリは、カバー曲「Fight Man」を演奏したKurechanz(クレチャンズ)に決まった。

グランプリ

◆ツインベースのチョッパー対決--勝ったのは…!?

昨年は企業・職場バンド予選会に出場したKurechanzだが、今年は実力伯仲の東京予選会で事前の音源審査を通過した。演奏曲はなつかしのフュージョンナンバー、カシオペアの「Fight Man」だ。のっけから「赤コーナー180パウンド・アイアン中島~、青コーナー120パウンド・テキサス金城~、ファイト!」と、ボクシングの試合よろしく、ステージというリングで戦う2人のベースマンを演出。見せ場は2本のベースがチョッパーのソロを交互に繰り広げる対決シーン。東京予選会の大トリで会場を盛り上げるこの乱れ打ちは反則技に近い!? ギターソロ、キーボードソロ、サックスソロと、怒涛の勢いでエンディングへ。「勝ったのはどっちだ!?」--という見事なノリで会場を魅了した。
グランプリの感想を聞かれて、「(客席で)聴いているとみなさん上手で、途中で帰ってしまおうかと思った。(グランプリの)実感がわかない」とメンバーは口々に話した。それでも最後はメンバー全員が手をつなぎ、会場にあいさつ。次第にうれしさがこみ上げてきた様子だった。

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Kurechanz/「Fight Man」(カバー)

審査員奨励賞

◆甲乙つけがたく3バンドが審査員奨励賞を受賞

ハイレベルな演奏で、審査員奨励賞はHOST(ホスト)、SIDE STEPS(サイドステップス)、ex-STARDUST(エクス・スターダスト)の3バンドが受賞した。
HOST/NEW SONG(オリジナル)
「ぶっとびましたね」と、司会者が驚いた。白髪のメンバーによるピアノソロから始まったアドリブ中心の演奏はウッドベース、ソプラノサックスと続く。テクニシャンぞろいのカルテッドによる独特のテンションで、会場はさながらジャズバーの雰囲気だ。かつてはライブハウスなどで活動していたものの、商社勤務のリーダーの海外勤務で一時は活動を停止。本大会がきっかけで活動を再会したという。演奏後は「アラ還(60歳近辺)が2人いるので不整脈が出てしまい、演奏が速すぎた」と苦笑。それだけに審査員奨励賞で最初に名前を呼ばれると、メンバーは半信半疑の様子で舞台に上がった。トロフィーと副賞が渡されると、やっと実感がわいてきたのかメンバーで喜びを分かち合っていた。

SIDE STEPS/Microcosmos(オリジナル)
来年が結成20周年というバリバリテクニシャンぞろいのネオフュージョンバンド。東京予選会のトップバッターとして登場した。演奏曲はオリジナルのインストゥルメンタルナンバー。Microcosmosというタイトルのイメージどおりの楽曲で、完成度の高い演奏を披露した。バンド紹介のときに客席のノリが悪く、「リハーサルも本番も滑っちゃった」と揶揄していた司会者だが、演奏後は一転して「うまい!」と絶賛。勢い余って、いきなり「優勝!」と続けたほどインパクトのある演奏だった。40代3人に混じって唯一の30代でベースを担当するメンバーは銀行に勤める。「本当に(銀行で)働いてるんですか?」と司会者がいぶかるほど素晴らしいパフォーマンスだった。

ex-STARDUST/Loser's Pride(オリジナル)
STARDUSTというバンド名での活動が10年以上前に小休止。「子育ても落ち着いてきたし、子どもの参観日などで顔を合わせているうちに」再結成して、exがバンド名の頭についた。「とりあえずロック」という4人の軽快なノリ。「若いモンには負けね~ゼ」の言葉どおり、東京予選会最速のリフをキザみ、タッピングも多用したギターソロが効いたハードな演奏で会場を魅了した。地元のお祭りやイベントで演奏している実戦経験がモノを言ってか、こなれた演奏で審査員奨励賞を獲得した。各地の予選会で奨励賞は2バンドだけだったが、東京予選会では3つ目の奨励賞となった。トロフィーを受け取った後、副賞であるヤマハの音楽制作ソフトの用意が足りず、目録が手渡された。

出場バンド(出演順)

◆応募324組、層の厚さを感じずにはいられない東京予選会

出場15バンドが、さまざまなジャンルの音楽を、それぞれのバンドの歴史を背景に、それぞれのスタイルで演奏、腕を競い合った。世の中にはこんなにもさまざまな音楽を楽しむ人たちがいるんだな、とその層の厚みを感じずにはいられない東京予選会となった。
座・イートルズ/
SLOW DOWN(カバー)

言わずと知れたビートルズの軽快なロックンロールナンバーをチョイ重めにアレンジ。コーラスの最後にシャウトするところが“っぽい”よね。
ブラウンコースト/
暗夜鉄道(オリジナル)

2人の女性ヴォーカルが「加藤和彦さんに聞いてほしかった」というオリジナル曲。自らも楽しんでさわやかに歌い上げ、ウエストコーストの風が会場をかけぬけた。
T.M.F. /
テネシー・ムーン(カバー)

おそろいの衣装で往年のカントリーを演奏。60歳代という年齢を感じさせない女性ヴォーカルが、同じく60歳代のギターとベースをバックに情感豊かに歌い上げた。
THE e-ROX /
ハテシナキバショ(オリジナル)

ふんだんはストーンズのコピーを演奏しているだけあってステージいっぱい駆け回るヴォーカル。テンションノートを効かせたアコギにボンゴの響きが雰囲気を引き立てる。
ハワイアンパラダイス/
アロハ川越(オリジナル)

60歳代のアロハ姿がずらりと並んでハワイアン。地元・埼玉の川越をPRしながらの演奏で会場は拍手の渦に。フラの踊りでステージも華やかに。
江ノ島マンボ/
横浜で逢いましょう(オリジナル)

80年代ハマのニオイを漂わせるブルージーで湿ったサウンド。ヴォーカルの声質と歌詞、そして泣きのギターの相性がバツグンだ。
MOON OWL/
ジャンキース(オリジナル)

フロアタムでパワフルなビートを刻むドラムをバックに、エッジの効いたギターが独特の曲調をかもし出す。でも女性キーボードはなぜかアキバ系のコスプレだ。
THE MUSE/
あの頃あの時(オリジナル)

透きとおったヴォーカルが心に響く女性デュオ。ピアノの女性はいつもはグランドピアノ。今回はエレピでの演奏で、目の前が客席というのは初めてで緊張したとか。そうは思えない堂々とした演奏だった。
シマウタプロジェクト/
島唄(カバー)

三線(さんしん)ではなく尺八の音色を大胆に効果的に取り入れた。このコラボは「この大会のために結成したメンバー」とか。
ロス・ボラーチョス/
El Sariri(エル サリリ)(カバー)

El Saririとはアンデスの旅人の意。楽器でも衣装でもアンデスの香りを運ぶ。ケーナやチャランゴなどの楽器は「独学で学んだ」。ちなみにロス・ボラーチョスとは「酔っ払い」とか。
Light Wave/
やわらかな夜(カバー)

東京予選会最多9人によるポップでおしゃれなスウィングジャズ。目指すは「ちょっぴり渋めのバンド」。女性ヴォーカルの声質が曲調にベストマッチ。

GUEST

◆スペシャルゲストに会場も大盛り上がり!

BLACKBOARD/お説教(2008年度グランプリ受賞曲、オリジナル)ほか
表彰式の前に、「日経おとなのバンド大賞2008」全国大会のグランプリバンドで、今年の大会のポスターにも登場していただいたBLACKBOARDがゲストとして登場、オリジナルナンバー3曲を演奏した。さすが昨年のグランプリバンド、堂々たるパフォーマンスに会場中が沸いた。その迫力もさることながら、学校の先生とは思えないルックスにも注目が集まった。「写真で見るより実物の方がコワイかも」の声も。演奏後は「保護者の皆様もありがとうございました」と、応援に駆けつけたPTAの父兄に向かってリーダーの中学校校長がごあいさつ、すっかりふだんの顔に戻っていた。

表彰式

◆実力派ぞろい、多彩なジャンルで審査は難航

審査を終えた審査員が登壇した。最初にヤマハポピュラーミュージックスクール講師の名取豊広氏が「バンド魂を完膚なきまで見させていただいた。多彩なジャンルが出てきて、何でもありって感じだった」と漫談風に講評した。最後は手持ちのウクレレを使って、牧伸二風のギャグを披露し、会場を盛り上げた。続いて審査ディレクターの田川律氏は「東京のバンドはスマートでうまい。演奏する人が歌詞やギターの音なりを、聴いている人の顔にピタッと張るように歌って欲しいと思った。これを聴けっという感じで」と感想を述べた。実際の審査はジャンルが幅広かったこともあって、優劣がつけづらかったという。
審査結果の発表を受けて、日本経済新聞社の長田公平・専務取締役が「グランプリ受賞者は昨年も出ていたバンド。選に漏れた皆さんも来年、挑戦して欲しい」とあいさつして、次回大会での再会を呼びかけた。「324分の15」が競演しハイレベルなコンテストとなった東京予選会はこうして幕を閉じた。

審査員の名取豊広氏のコメント

すごいヤツらが集まった! 今日、集まったバンドメンバーたちは、いつもはどこで何をやっているんだろうか。
かくも素晴らしいバンドたちが一堂に会して、東京予選会のレベルの高いこと!
ただ音楽を“好きだ”という一心で演奏する15組のバンドたち。
さまざまなジャンルの音楽が、次から次へと繰り出され、お客様も感動の連続!
出演者も観客も一体となって盛り上がる会場の光景が、審査をする私の心も振るわせる! 音楽が好きだから、お互いに共感し理解しあえるこの幸せよ!
みんな素晴らしい! 他人がなんと言おうと気にするもんか、ずっとバンドをやり続けていこうじゃないか。
一緒にすごしたこの時間、幸せだぜ、ありがとうみんな!

 

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